バケーション要員

夜に出発する旅行が好きだ。明るいうちに出発して車窓風景を見るのも好きだが、夜の移動には不思議な厳かさと非日常感が同居して心が浮足立つ。次の日の朝起きると「こんなところだったのか」という感動もある。

 

先日ドライブに行った友人から河口湖でワーケーションをするので一緒に来ないかと誘ってもらったため、行ってきた。とはいえ私は有給消化期間で特にやることがないのでただのバケーションである。私を含めた3人でエアビーで一軒家をまるまる借りるとのことだった。

 

待ち合わせは平日夜19時の調布。日中に特段予定がなかったので少し早めに調布駅へ行き、荷物を置いて京王線沿線沿いを散歩することにした。

調布からひとまず仙川へ移動する。小腹が空いていたのでクレープを食べに行った。

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これはかなりおいしかったですね。ふわふわの生クリームがたくさん入っていて生地も普通のクレープよりパリパリして香ばしかった。生クリームだけのクレープもあったのでクリームにこだわりがあるんじゃないでしょうか。アンタらも仙川に行くことがあったら食べに行けば良いんじゃない。

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その後柴崎へ移動して手紙舎というカフェ兼雑貨屋へ立ち寄る。かなりショックだったのだが、私はもはやこういったハンドメイド雑貨などに全く良さを感じなくなってしまっていた。動物を模した置物も布で作られたお花モチーフのピアスも全く心を動かさない。飾られているドライフラワーに関しては明確に好きではない。ドライフラワーって様々なところで用いられすぎて陳腐化していませんか?飾っているお前たちは本当にそれが良いと思って飾っているのか?これを飾ればこういう雰囲気になるはずという打算で飾っているのではないか?ドライフラワーを記号だと思っているのではないか?それは花という紛れもない一つの生命であったということを忘れているのではないか?別にそれでもいいが……。

以前は割とそういったものが好きでハンドメイドのフリマアプリを使いアクセサリーなどこまごまとしたものを買っていたのだが、今や私の欲しいアクセサリーといえばヴェルサーチェの黄色っぽいゴールドのピアスやポメラートのデカ石リングなどである。これが年を取るということ……?思ってたんとちがうな(決して手紙舎に置いてあるものが良くないというわけではありません。)

手紙舎で時間をつぶそうと思っていたが、短縮営業中のため18時までで閉店とのことだったのでおとなしく調布駅に戻り猿田彦珈琲へ行った。

時間までチョン・セランの『フィフティ・ピープル』を読みすすめる。面白すぎる……。最近チョン・セランの小説を読み漁っているんだけど、どの話も同時代の女性の話を読んでいるな~という気持ちになる。きっと翻訳もいいんだと思う。フィクションにしか存在しない女性像が小説に出てくるたびにまあこれは所詮お話だからな……と諦めと少しの残念さを感じていたので、こういう描き方をしてくれる作家の存在には救われる。いつもあとがきの作者コメントがすごく良いので、読む機会があればあとがきまで読んでみてくださいよ。

 

約束の時間になり友人たちと合流し、夕食をとった後近くのスーパーへ移動し買い出しをする。この間の移動はすべて車でした。短距離を車で移動するのって大好きだぜ。その後高速に乗って山梨へ移動。後部座席に一人で座っていたので黙って窓の外を見ていたら1時間ぐらいで宿に到着していた。

部屋は一人一部屋でベッドはキングサイズ。さぞ広い部屋かと思われるだろうが部屋の9割をベッドが占めていた。

それにしたって自分の部屋があるのは本当に嬉しいことだ。今の家には自分ひとりのスペースというものがほぼない。一人暮らしの頃が恋しく思い出されるのもしばしばである。「この空間すべてが自分のもの」という感覚はなにものにも代えがたい。少し複雑な気持ちになりながら面倒くさくならないうちに一番乗りで風呂に入ったらシャワーの水圧が弱すぎてものすごい速さで出てしまった。嫌というのもあるけど早くみんなに「水圧が、よわいぜ!!!!!」「風呂に湯を張ったほうが、いいぜ!!!!!」と伝えたくて……。

その夜はみんなで甘いワインを飲んでから早めに就寝。知らない人が自分の部屋に入ってくる夢と42度の高熱で苦しむ夢を見る。最悪だ。今までも知らない人が自分の部屋に入ってくる夢を何度かみているので、きっと自分の中で一番嫌なことなんだろうなと思う。部屋に限らず知らない人がズカズカ入りこんでくるのは最悪。

 

朝起きてから宿の周辺を散歩し、人の家を眺める。河口湖周辺のお土産屋さんへ行き、剣にドラゴンが巻き付いているキーホルダーを探したが見つからなかった。最近ずっと探しているんですがなかなかありません。ブームが去ったのでしょうか……。どなたか見つけたら教えて下さい。

旅先でスーパーに入るのが好きなのでその日も入った。立派なパール柑が売っていたので購入。おれはデカ柑橘愛好家……。全然山梨に関係ないけど好きなものを好きに買うぜ。

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昼食はてきとうに宿の近くでほうとうを食べ、その後はずっと自分一人の部屋にいた。窓を開けてレースカーテンだけを閉め、涼しい空気が入ってくる状態でDMMブックスのセールで購入したジョジョを読んだり、ネットサーフィンをしたり、眠くなったら寝たり起きたくなったら起きたりしてた。

夕飯はみんなでイタリアンを食べたあと、私が昨晩大騒ぎしたので車で温泉まで連れてってもらえることになった。やっぱこの世は大騒ぎしてなんぼじゃの!!ガハハ!!

デカい湯船!!強い水圧!!雑な色味のライトで光る風呂!!などを堪能したのちに何故かドン・キホーテへ行くことに。ドンペンが大好きなのでドンペングッズを探していた一方でみんなは次の日の朝ごはんとかを買っていた。ドンペンのほうが大事だよ。中から光るドンペンが出てくる入浴剤を購入。山梨に関係はありますか?ないけどいいでしょ……。

 

「明日はどこか観光にでも行けば?」と友人から言われるも「いえ、わたくしは休みに来ているのでそういったことは……」と断る。なぜはっきりと断るのか。そうだね~とか言っておけばいいのにね。でもそうだね~って言われた後にそうでないことをしているのを見られて相手が密かに傷ついたりしたら嫌なので私はなるべくNoはその場でNoと言うようにしている。この率直さが私の愛すべきところなんだ。

 

翌日もベッドの上から動かず夢想にふけって過ごした。他の二人はもう一泊する予定だったが、私は夜に予定があったため昼過ぎに高速バスで帰る。2時間ぐらい何をするでもなく山を眺めてうたた寝してたらもう東京駅に着いていた。贅沢な時間である。

 

帰宅すると同居人がものすごく嬉しそうにしていた。帰ると喜ぶ人がいるという事実に胸を打たれる。何があっても必ずこの人のもとに帰ってこよう。

ただし自分一人の部屋はここにはない。次の目標は自分の部屋を持てる家に住むことに決めた。